つくばで日記
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2011年12月29日 必要があって、数年前の受信メールをチェックしていたら、自分で携帯からパソコンに送った件名ナシの未開封メールが目にとまった。開いてみると「そうだっ種」と書いてあるだけ。私は出先で、思いついたことなどを携帯からパソコンにメールすることがある。あとでそれを開くと、どんな気分でどういうつもりで送ったのか、すぐに思い出すのだが、これについてはまったく思い出せない。俳優さんの名前を度忘れしたときみたいにネット検索などで解決できないから、自分で思い出すほかはない。早く思い出して「そうだ、そうだったね」となりたいのだけれど。 |
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2011年11月22日 晩秋に、小さな鈴の音のような耳鳴りが起こることが多い。シャンシャンではない。金属に少しガラスが混じったような、シャンとチンのあいだのような、ちょっと侘しい雰囲気の音。この耳鳴りが嫌いじゃない。今日は、右耳の奥から遠い感じで幾度となく聞こえてきた。たぶん、寒くなってきて、ぐっと血の巡りが悪くなることが関係しているのだ。 |
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2011年10月18日 電車の端の席に中年女性が座っている。ほとんどの人がうつむいている中、彼女は顔を上げ、中刷り広告に目をやりながらゆっくりと息をはく。そしてしばしぼんやりする。次に彼女は、膝の上でピアノを弾くように指を動かしながら、しばらくつり革を見つめる。そのあと彼女は、うっすらと涙を浮かべ、携帯電話のポスターに目をやる。ここで小さくくしゃみ。そして今度は、後頭部を席の上の部分にあてて顎を突き出し、天井に顔を向け遠い目になる。夢見がち、ならぬ、上見がちな変な女。そういう人を見かけたとしたら、それは私です。最近、ipodで音楽を聴くようになり、電車でそうなっています。 |
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2011年9月6日 今日、秋になった。私の中の気象台がそう判断した。だって、吹いてきた風が、まぎれもなく秋風だったから。 |
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2011年7月21日 「自宅に帰ってきたな」と実感することの一つが、タオルだ。毎日ローテーションして使っている普通サイズのタオルは10枚くらいあって、長く使っているものばかり。ふかふかのやこだわって選んだのより、誰かにいただいた何かのイベントの文字の入ったやつや、どうでもいい幾何学模様柄のとかキャラクターがプリントされているやつが多い。タオルって割りに丈夫だから、5年や10年はあたりまえ、場合によっては20年以上使っているものもある。これらのタオルを、干したり、使うために広げたりしたときに、見慣れた柄や絵が目に入り、「おお、我が家だ」と思う。 |
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2011年6月17日 このところ歯医者通いをしている。診療台に座ったまま待たされるつかのまに、自分の素足の足指を眺める。 |
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2011年5月19日 今日はとてもいい天気で、窓を開けると踊るような軽やかな風が入ってきて、「一時間(いちじかん)」を「いちちかん」、「私(あたし)」を「あちし」、「同じ(おなじ)」を「おなし」、「近似値(きんじち)」を「きんちち」、などと言う人たちを思った。彼らは言葉を、おおらかに、言いやすいように使っているだけで、昨日や今朝の何気ない出来事を、やや早口に話してくれるのだ。 |
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2011年4月12日 どちらかというと年配の男性が、足を肩幅に広げて立ち、胴まわりを整えなおしているのを昔はよく見かけたものだった。まず、前を広げたズボンを少し下ろす。ステテコか股引きを定位置までひきあげ、次に上体の下着を皺のないようにステテコの上にのばし、次に上に寄せておいた腹巻をきれいに伸ばし整え、次にYシャツの裾を丁寧に伸ばし、その上にスボンを引き上げて、チャックをしめ、仕上げにベルトをしめる。その一連に動きをしているときの男性は、広い草原の中に立ち、遠くを見ているかのような目なのだ。そして、整える手つきは実に落ち着いており動きには無駄がない。 |
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2011年3月2日 昔、「クリープのないコーヒーなんて」というCMのコピーがあった。クリープとコーヒーの部分に、あれこれ別のものを当てはめてみたりしたものだった。 |
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2011年2月4日 プールにも荒波の日がある。水中歩行コースを歩いていると、アクアビクスをしている方向からは、大勢でボートを漕いでいるかのような大波がぐいぐいと寄せてくる。また一方では、赤ちゃんを抱えたママたちが先生の掛け声に合わせて「かーに」「かーに」と声を出し蟹歩きを繰り返す。これもやわな波ではない。気を抜くと足元をすくわれる。となりのコースからは、ものすごくしぶきをあげるクロールの人、なかなか進まないバタフライの人が過ぎる波がきて、鮫のような威勢で私を追い抜いてゆく人による渦潮のような波にも襲われる。いやはや、一時たりとも気が抜けない。さまざまなインナーマッスルに効いていると思われる。こんなとき、頭の中で聞こえているのはマーラーの「巨人」。たのしいです、荒波の日が。 |
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