MISOPPA日記  

 
2001年2月25日


 風景--銀色もざいく

        山村暮鳥

 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 かすかなるむぎぶえ
 いちめんのなのはな

 

 


 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 ひばりのおしやべり
 いちめんのなのはな

 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 いちめんのなのはな
 やめるはひるのつき
 いちめんのなのはな 


油で餅を揚げていたら、ぼーっとしてきて、この詩を思い出した。換気扇をつけ忘れてて、油に酔ったみたい。

 

 

2001年2月21日
  おとといは、ささいなアクシデントが重なりまくりで、とうとう予定の仕事ができずじまいだった。寝不足でぼーっとしていたから余計に、一日の終わりにどっと徒労感に襲われた。それで、こんな歌まで書いてしまった。
      だめな日は何してもだめ泥流のそばにいるだけ 止まぬしゃっくり
  しゃっくりって、「ああ、やっと止まったあ」とほっとして、お茶でも飲もうとしていると「ひっく」ときて、ぬか喜びだったと悟ることがある。「止まってなかったんだな」と思う瞬間がなんともむなしい。子供のとき、「しゃっくりが止まらなくて死んだ人がいるらしい」と聞いた直後にしゃっくりが出始まり、こわい思いをしたものだ。看護学校の時の生理学の講義で先生が、眉頭のそばのツボを押すとしゃっくりが止まると教えてくれた。先生がいつもより大きく見えた。
  今日は、用があって横浜は浦舟町に出かけた。  用が済んでほっとしながら建物をあとにする。ふと、さんざんだったおとといのことを思い出す。駅までの道はだいたいわかっていたが、前から歩いてくる男性に道を聞いた。どうやら私、誰かと話したくなったみたい。 「すみません! 阪東橋駅はどっちでしょうか」  男性は60代、いや70を超えているかもしれない。短い髪はほとんど白くなり、青白い頬に毛細血管が浮き出ている。乾いた鼻汁が鼻の下にこびりついている。薄手のジャンパーがいかにも寒そう。  駅までの道はとても簡単で、聞くのがおかしいくらいなのだが、彼はとても感じよく説明してくれた。礼を言って男性と別れ信号待ちをしていると、さっきの男性がわざわざ悪いらしい足をひきずりながら引き返してきて、曲がるところの目印をおしえてくれた。男性の気持ちがうれしくて、私は目頭が熱くなった。 「ありがとうございます!」 と何度もお辞儀しながら、私は右手を差し出していた。男性も右手を差し出し、自然に握手。道聞いただけで握手したのなんて、はじめて。 「ほんとに、ありがとうございます」 「いや、俺だって……」  男性もなぜか目をうるませていた。彼もちょうど、人と口を利きたくなっていたのかも。
  足取り軽く阪東橋駅を目指していると、「おぼっちゃま」という看板が目に入った。ネーミングまでの物語を勝手に想像して、勝手に笑った。
  東京に戻るアクティ快速の車窓から、自動車教習所の教習コースが見えた。混んでいるらしく、コースは渋滞となっている。車同士がぶつかったのか、縦列駐車の場所で、数人の大人が車を降りて、腕組みして顎突き出して言い合いをしている。コースの中でのことだから、なんだか笑えた。
  さんざんだったおとといのことが、遠いおとといになった気がした。

 

2001年2月20日
 昨日今日とすこし暖かい。三寒四温。きっと明日はまた寒くなるんだろう。梅香を吸いに行きたいなあ。まだ咲いてないかな。 寒くて、喚起の窓を開けるのも嫌だったこのごろだったが、今日はめずらしくベランダに出たくなった。 ベランダでは、ゼラニウムが花をつけていた。何度か降った雪で、オリズルランは枯れ、ほかの植木もおしなべて元気がない。なのにゼラニウムだけは、いつものようにしずかにシブトイ。長いこと見ていた。

 少しシブトク、ながーくシブトイ
鼻を近づけるとくさい


2001年2月17日
  夕食を外でとり、荒木町を通って帰ってくる。荒木町の小道に入るといつも、自分の足音が聞こえなくなる。太った猫がのたり横切る。  住吉町の交差点まで降りてくると、そこは事故現場になっていた。何台もの車がへこんだりつぶれたり。その周りに侵入禁止テープが張られている。警察官がいっぱい。野次馬もいっぱい。怪我人は運ばれたあとらしい。ちらばったガラスの破片が警察のライトで照らされている。それがきらきらとなにかの目のようにきれいで、こわくなった。 

 


新宿荒木町の小道

 


荒木町のにゃんこ先生

 

2001年2月16日
  郵便局に行ったら、ルパン三世絵葉書が発売されていたので購入。その後、局の二軒隣りにあるマッサージ屋に吸い込まれるように入ってしまう。「首も肩も腰もずいぶん凝ってますねえ」「やっぱりねえ」
  凝っているのは嬉しくないことなのに、「凝っている」と言われるのは悪くない気持。睡眠不足自慢しちゃうときの心理と同じかな。
  アニメのルパン三世では、石川五右衛門がお気に入りだった。キャストの中で肩こりになりそうなのは五右衛門である。彼がマッサージ師に「凝ってますね」と言われても、きっと無言なんだと思う。指圧がいかに痛くてもじっとこらえていそう。
  買ってきた絵葉書をカラリオでスキャンしようとしたが、失敗。やり方は相当簡単らしいのに……。ふうーうー、という薄らさびしい尺八の音が頭の中で鳴る。

 

今までのMISSOPA日記  1月a  1月b  月a