MISOPPA日記  

 

 

2001年3月13日
 がらがらがらとガラス戸を開け、一歩進み、一礼。 「先日の乳房のレントゲンで、おせんべのように乳房が機械にはさまれて、いやはや参りましたあ」 頭をかきながら、 「いーえ、あの検査を屈辱的だとおっしゃる方もいますが、私はそうは思わないです。元ナースだってこともあるかもしれませんね。ただ、機械に挟まれた痛みがいまだ残っておりまして」 一礼。一歩下がり、らがらがらがとガラス戸を閉める。 誰もいない事務所で、ふと椅子から立ち上がり、ひとり芝居みたいなことやった。やったあと、しばらくひとりで笑っていたが、なにがそんなにおかしかったのか、自分でもわからない。

 

2001年3月10日
  小説家山本昌代さんの作品のファンです。去年、購入できたすべての作品を読了し、この冬は書店でも古書店でも見つからなかった本を図書館で借りた。ファンとしてはどの本も自分の物にして手元に置きたいのだが、ないものは仕方ない。図書館で借りた六冊はとっくに読み終えていたが、なかなか返せないでいた。名残惜しいのだ。昔、お女郎さんを身請けした人の気持ちが少しわかるような……。しかしいよいよ、「早く返せ」という督促状がきてしまった。図書館のブラックリストに載ってしまったらまずいから、泣く泣く返すことにする。せめてもと、表紙をコピーしておくことにした。
  ♪わかれることは つらいけど しかたがないんだ〜〜〜♪
  昔の歌謡曲で千昌夫の「星影のワルツ」の出だし。いまは亡き祖母が、小さかった私の手を引きながらこの歌をよく唄ってた。祖母の間延びした独特のテンポに合わせて歩くのは至難の業だった。本をコピー台に置き、蓋をしてスイッチを押す作業は、祖母のテンポで「星影のワルツ」を唄いながらやると、ちょうどいい間あいだった。

 

2001年3月7日
  3月3日に、渋谷文化村ル・シネマで映画「ザ・カップ 夢のアンテナ」を観てきた。チベッドの僧院の小坊主たちが、サッカーのワールドカップを見たくて奔走する。監督がチベッドの高僧らしい。ストーリーを劇的にせず、さらっと流しているところが好ましいし、説教くさくない。観ているときは風のように過ぎた感じがしたけど、小坊主たちの顔やしぐさ、寺院の周囲の景色、そしてテーマ曲が数日たったいまごろになって思いだされ、なんかいい気持ちになる。ちょうど先日、尼さんのエッセイも二冊読んだからか、スキンヘッドをさわりたくて仕方ない。
  昨日、携帯電話をタクシーに忘れた。タクシーを降りてから、五十歩ほどあるいて気づく。最近ぼけ続きで、自分が嫌になる。さて、どうしたらいいか。タクシー関係のことはタクシーに聞くに限ると思い、用事を済ませたあとすぐタクシーに乗り、相談。運転手さんは親身になって、一、携帯に電話してみる。二、レシートにプリントされているタクシー会社に連絡する。と、こまかな注意点を付け加えながらおしえてくれる。相談する前からそれはやろうと思っていたことだが、ありがたく拝聴。「早いに越したことはないから、僕の携帯を貸してやるからいま電話してみ」と運転手さん。恐縮しながら辞退。事務所に戻って、すぐさま自分の携帯に電話してみると、忘れた先の運転手さんが、近くまで持ってきてくれた。あわてて買った図書券を御礼として渡し、携帯電話を受け取った。親切な二人の運転手さん、ありがとう。合掌。 


念仏坂の階段を上りきると、旧フジテレビ跡からにょきっと出ている工事用牽引機?が目に入る。路地を曲がったらいきなり巨大な大仏様が現れたときみたいにぎょっとする。特撮画面みたい。47階建ての公団住宅ができると聞いている。昔からそうだったけど、でかいものが急に目に入るととてもぎょっとする。正直いって、こわい。はじめて海を見たときもそうだった。

 

2001年3月4日
  3月1日にここに書いた♪何気ない毎日がー♪とはじまる歌について、さんが資料を送ってくださった。さんもよくこの歌を口ずさむそうだ。タイトル「いつか街で会ったなら」作詞岡本おさみ作曲吉田拓郎。小椋けいが作ったのではなかった。
  今日、美容室でパーマをかけていたとき、雨が止んでいるのに気づき、「あっ、止んでる」と声をかけると「あら、ほんと」と美容師さん。二人で窓の外を見たあと、また私は♪何気ない毎日がー♪を頭の中で口ずさんでいた。 



武井武雄 「花はおもかった」

 

2001年3月1日
  おとといの27日には鈴鹿市へ、そして昨日28日には静岡市へと仕事ででかけた。関西本線の車窓から、家々ののどかな佇まいをながめてたら、そのうちの一軒が、洗濯物を贅沢に干していた。洗濯竿一本につき一足、計三足の股引が、片足を竿に通すやり方で干されている。ぶらさがったほうの片足が、風にはためいて、なにかを漕いでいるかのよう。
  昔、中村雅俊が♪何気ない毎日がー風のように過ぎていくー♪とはじまる歌を歌ってた。題は失念。小椋けいが作った歌だったかな。ここ数日、気が付くとなぜか頭の中でこの歌の出だしだけを口ずさんでいる。CMの歌を口ずさむみたいに。そういえば♪カダン、カダン、カダン、お花を大切に♪ってのも一時期、何かといえば口ずさんでいた。
  私はどんなところで何気ない毎日を感じるのかなあ。洗濯物が風にはためいている様子を見たときは、確実にそれを感じるかも。干した股引を目にしたあと、そんなことを考えた。
  静岡行きの昨日は雨だったから、洗濯物はひとつも見えなかった。うちでは最近、乾燥機で済ましてばかり。今度、天気のいい日にベランダに干そうかな。パン、パンと皺をのばしながら。

 

 

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