MISOPPA日記
2001年5月31日
午前中、銀行の自動機だけがあるところに振込みに行った。そこは二台しかなく、ちょうど一台は点検だかお金の補充だかをやっており、一台しか使えなかった。
少し並んで待ち、私は機械で二件だけ振込みをした。ほんとうは別の振込みもしたかったが、月末だし並んでいる人をあまり待たせるのは悪いと思ったから。そろそろ振り込みが終わるというそのとき、私のすぐうしろで待っていた青年が突然きれた。「早くしろよー、こっちは忙しいんだよ!てめえ」と怒鳴った。ちらっと振り向くと、青年は携帯電話を振り回し、顔面を紅潮させていた。最近のニュースを思い出し、「この青年を刺激したら殺されるかも」と一瞬思ってしまった。あまりの剣幕に驚いた私は、振込みが終わると同時に「あっ、ごめんなさい」と言ってそそくさと出てきてしまったが、あとになって腹がたってきた。私は謝ることなんてなかったんじゃないだろうか。十分も二十分もひとつしかない機械を占領されたら、誰だって待つ身としてはいらいらしてくるのはわかる。でも、私が使ってたのはものの三分程度だった。機械の操作だって、すばやく行なったのだ。ジャージにサンダル履きの私の外見でそうとう暇なおばさんに見えたのかもしれないが、私だって暇にしているわけではない。小心者の私は、怒鳴られた声のこわさに反応してしまい、午前中いっぱいどきどきしていた。 |
2001年5月29日
今日の昼、新しく出来たメキシコ料理屋にタコスを食べに行った。タコスは洋風居酒屋で食べたことがあった。でも、メキシコ料理屋のタコスとなるときっと本場の味がするんだろうな、と思うと食べてみたくて食べてみたくて仕方なくなり、行った。味は普通だった。それがまた本場ぽい気もした。気が済んだ。 |
2001年5月23日
18日に書いたピアスねこについて、ある方が情報メールを送ってくれた。野良猫を守る会(正確な名称は不明)みたいなグループが行なっているようです。なのでいたずらではないみたい。ピアスをつけるくわしい目的などご存知の方はおしえてほしいです。
ところで、今日届いた商売メールに、件名が「串あげはいかがでしょう」というのがあって、笑ってしまった。金魚売りの売り口上みたいで。 |
2001年5月21日
昨日、原稿を書くために、子供のころのことを思い出してたら、久しぶりにぬり絵をやりたくなり、やった。 「あのぬりえをもう一度ぬってみたい」という熱い要望があり、1998年3月10日に小学館から出版されたのが、写真の「THEきいちのぬりえBOOK」で、最近私はときどきぬっている。
小さいころ、この、きいちのぬりえもわりにやったのだけど、いちばん塗ったのは、少女マンガ風のもうちょっとすらっとした体型のやつで、とくにご贔屓にしていたのは、塗ったあと首のところをハサミで切って、身体と顔をお好みですげ替えられるタイプのやつだった。そうか。いま、この文を書いていて気づいたけど、子供のころからいまもときどき見る悪夢はそのぬりえが関係しているのかもしれない。場面はとてもリアルで、語るととても長いので省略するが、首から下を切って別の人と身体を取り替えなければならない、という夢。実際に通ってた玉造小学校が舞台で、身体検査をするみたいに普通に行なわれる。いまでもその夢をみると、こわくて、夢の中でふるえる。どうしてそんな夢をみるのか、ずっと不思議だったが、なんのことはない、ぬりえからきていたんだ、きっと。 |
2001年5月18日
最近、うちの狭いポーチにノラ猫がよく集まる。一匹のこともあるけど、だいたいは二、三匹、多いと五匹のこともある。それぞれがあさっての方向を向き、一度も「にゃあ」と泣かずにしーんと座っていることが多い。だから逆に、なにかしら重大な会議でもしているように見えてしまう。
昨日は三匹きていた。そのなかの1匹の耳にピアスがつけられているのを友達が発見した。真ん丸いシルバー塗りのピアスが耳にささり、きちんとキャッチでとめてあるのが窓ごしに見えた。誰かが面白半分でやったのだろう。私は犬にマジックで眉を描いてしまったことはあるけど、ピアスというのは一線を超えてしまっているように思う。痛かっただろう。邪魔でもあろう。今日はこなかったから、どこか別の場所で会議でもしているのだろうか。ピアスのこととかについて。 |
2001年5月15日
誰がやっても、ビート板を使ってぱしゃぱしゃとバタ足をやる姿は、幼児が無心でカタカタを押しているときのようなかわいらしい風情になる。とくに、「俺の泳ぎはちょっと違うわけよ」「どけどけ俺のプールだ」とでも 考えていそうな凄みのあるおじさんが、おもむろにバタ足でぱしゃぱしゃやりだしたりすると、余計にかわいらしく、珍しいものを見たようなニンマリの気持ちになる。それに出くわしたときは、たまたま通りがかった場所でちょうどからくり時計がはじまっていた時みたいな「あらあら、やってる」って感覚になる。今日もプールでタイミングよく出くわした。 |
2001年5月14日
一日置きに配達される牛乳を、朝、玄関の外に出してある牛乳ボックスに取りに行くのがたのしみ。昔、母の実家に泊ま ったとき、にわとりの卵を早朝取りにいったことがあるが、それに似たわくわく感がある。
うちの前の道は人どおりが多くて物騒なので、牛乳ボックスに鍵をかけてもらっている。しかし配達当初は、ボックスの上蓋だけに鍵がついていたことがときどきあった。それでは蓋が開いてしまう。鍵の意味がない。不思議なのは、ときどきは上蓋と本体にしっかり鍵がかかっていることもあるということだった。
配達の方は交替制だから、その人によって鍵に対する考え方が違うのかしら。
それとも、いつも同じ人だけど気分によって、しっかり鍵をしたり上蓋だけにしたりするのかしら。気分じゃなくて、考えがあってやってるとか、「この鍵かけにくいぞ」といううちら対するアピールなのか。
配達は午前四時ごろで、その時間に起きていることがあるから、配達の方に直接真意のほどをたしかめたいとも思ったが、それも大げさな気にして、やらなかった。
毎回、「あっ、今日は鍵がかかってる」「あっ、今日は上蓋にだけだ」と、占いをみるような気持ちで牛乳を取りに行っていた。いまは毎回しっかりとかけてくれるようになった。
ああ、その配達の方の気持ちの変化、考えを知りたい。配達のかちゃかちゃという音は家の中から何度も聞いているが、配達の方の顔は知らないので、逆に想像が膨らむ。 |
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2001年5月9日
仕事で小山市へ。「なすのMAX」という二階のある新幹線に乗って行く。二階席が取れたのでテレビの「世界の車窓から」のテーマ曲を思い出しながら勇んで乗り込んだのはよかったけど、資料を読んでいるうち小山に着いてしまい、景色を眺めないでしまった。残念。帰りは帰りで、座って一分もたたないうちに寝てしまった。明日は名古屋に行く。
2001年5月7日
前回載せた「あとずさりミニエッセイ」が一回分抜けていたので、追加します。
<悪いが3分間、俺の知り合いになってみないか。3分は長いぞ。馴れ馴れしくするぞ。からかいもひやかしも言う。どうする? 勇気あるか。いらいらさせるな。そうか。決めるか。おっ母さんなんて忘れろ。よし。もう3分経ったな。さらばだ。>
2001年5月5日 今日は、91年10月から94年1月まで、雑誌「紙のプロレス」の隅っこに書かせてもらっていた「あとずさりミニエッセイ」を紹介してみたいと思う。
<野ウサギのように不規則にジャンプできたら芸術家だったらうらやましがる。モンティパイソンの「変な歩き方レース」にも出場できる。テレビだって宗教だってアメンボだって、みんなみんな俺を好きになる。じゃあばよ、俺には練習があるんだ。>
<積み上げた古本もそうだし、このカーテンだって小型テレビだってアイロンだって、自慢じゃないけどみーんな盗品。ゲッゲッゲゲゲのゲー、盗品にゃ値段がない! なんだその目は。悲しそうに笑うなよ。可愛いおまえも盗品なんだから。>
<そういうのダメなの。とりなしたって俺はバカ。あいつの言葉を俺は持ってないの。地平を略奪するなんて脳があきれちゃうよ。人生の予約なんてできないよ。なんせ俺は誰なのか、わかる時はこないんだからね。ダメダメ、ほかに行きなよ。>
<俺には意味がない。地球の自転だって結局は意味がない。そうだ、昨日のエッチだって意味はまったくないぞ。しかし愛犬ポチョムキンよおまえの「ワンッ」もかなり美しく意味がない。俺のまわりの森羅万象たちよ! どうだまいったかハハハ。>
<いつものっぴきならない千人の作家たちよ。「あいつは生意気らしい」とピノキオに伝えてくれないか。「雲に乗ったらしい」と掲示板に書いてくれないか。俺は世界一「もってのほか」の男になりたい。見てくれ、鏡に写ったぞ、俺の生意気が。>
<手がなくなりました。耳がなくなりました。目と鼻もなくなりました。声もなくなりました。時間も距離もなくなりました。徹底的になくなりました。自分もいつかなくなりました。と思ったらなくなってないじゃないか。マイッタネこりゃ。>
<この俺様が嘘なんてついてられるか! 汚いこともしてきたさ。お金もかなり好き。欲求は全部満たしたいよ。でも一番大切なのは、おまえかもしれないな。だから与えてくれ、目一杯俺に降り注いでほしいんだ。……はい、ごまかし終わり。>
2001年5月2日
午前中、プール。頭の体操でもしながら泳ごうと決め、上から読んでも下から読んでも意味のある言葉を探してみることにした。
まず、バカとカバ。えーと、それから……。思い浮かばない。いくら考えてもだめ。
仕方ないから考えるのをやめ、泳ぐのに集中してたら、小学校のときのクラスメイトの男子Aを思い出した。彼は「バカ カバ ちんどんや お前のかあちゃん でべそ」と言っては友達をいじめていた。とくに、おとなしい男子BはいつもAにいじめられっぱなしだった。
ある日、Bが逆襲に出た。Aがいつものように「バカ カバ ちんどんや……」とBに向かって囃したら、Bは急に両手をぶんぶん回しながらAに向かって行った。そのくらいのことで、Aはたじろがない。
「なんだ、やんのか!」 けれどBが「お前のかあちゃん しらが!」と叫ぶと、Aは泣きそうな声で「うっせえ」と言って教室を出ていってしまった。それからニ、三日ほどAはおとなしかった。
その後のPTAの時、髪を真っ黒に染めたAのお母さんがあらわれ、それに気付いた私は「あっ」と声が出てしまった。
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